中堅企業の国際課税リスク(国外関連者寄附金)

海外展開を行っている中堅企業の皆様にとって、税務調査で「痛い」指摘を受けやすい項目の一つが、「国外関連者に対する寄付金」です。

悪意がなく、単に「親会社だから子会社の面倒を見るのは当然」という感覚で行っているサポートが、税務上は「多額の追徴課税」というしっぺ返しを食らう原因になります。本記事では、このリスクの本質と回避策について解説します。


1 問題:良かれと思った「親心」が招く損金不算入

海外子会社を立ち上げて間もない時期や、業績が苦しい時、親会社はしばしば以下のような負担を肩代わりしてしまいがちです。

  • 経営指導料の未請求: 親会社の役員や社員が現地へ赴き、技術指導や経営管理を行っているのに、その対価(経営指導料)を請求していない。
  • 出張費・給与の肩代わり: 海外子会社の業務のための出張なのに、航空券代や滞在費を親会社が経費処理している。
  • 過大な役務提供: 契約範囲を超えたサポートを無償で行っている。

これらは、税務署から見れば「本来子会社が支払うべき費用を、日本の親会社が肩代わりして利益を付け替えた」とみなされます。その結果、「国外関連者に対する寄付金」として全額が損金不算入(経費として認められない)となり、法人税が加算されるのです。

2 根拠:法人税法第37条と「寄付金」の定義

この根拠となるのは、法人税法第37条です。 日本の税制では、海外の子会社(国外関連者)に対して支出した寄付金は、その全額が損金不算入となるという厳しいルールがあります。

また、単に対価を受け取っていれば良いわけではありません。独立した第三者間での取引であれば当然乗せるはずの利益(マージン)を上乗せしていない場合も、その差額が寄付金とみなされる可能性があります。基本的には、発生したコストに数%の事務手数料(マージン)を加えた「コストプラス法」などでの請求が求められます。

3 解決策:実態を「契約」と「証跡」で裏付ける

このリスクを回避するためには、親会社と子会社の関係を「甘い親子関係」から「対等なビジネス関係」へと整理し直す必要があります。

① 「経営指導料契約」の締結と対価の回収

まずは、どのような役務(コンサルティング、技術指導、管理業務など)を親会社が提供し、それに対していくら支払うのかを明文化した契約書を締結してください。そして、実際にその金額を定期的に請求・送金することが大前提です。

② 役務提供の「対価性」の立証(証跡の保管)

税務調査で最も問われるのは、「本当にその対価に見合う仕事を親会社がしたのか?」という点です。

  • 業務報告書: どのような指導を行ったかの記録。
  • 出張報告書・タイムシート: 誰が何時間、子会社の業務に従事したかの記録。
  • メールのやり取り: 具体的な指示や相談の履歴。 これらを保存しておくことで、支払われた対価が「実態のある役務の対価」であることを立証できます。

③ 負担区分を明確にする基準の作成

「この会議はグループ全体の利益(親会社負担)」か「この会議は現地子会社の個別案件(子会社負担)」かを切り分ける社内ルールを策定し、経理担当者が迷わずに処理できる体制を整えます。


まとめ

海外子会社への支援は、グループの成長に欠かせません。しかし、その支援が「無償」で行われると、結果として日本の課税額を減少させることとなり日本の国庫から見れば「本来日本で払われるべき税金が海外に流出している」と捉えられてしまいます。

「親会社だから出すのが当たり前」という発想を捨て、「全ての役務提供には適切な対価を」という原則を徹底することが、中堅企業が国際課税リスクをコントロールするための第一歩です。


貴社では現在、海外出張費や本社の人件費を「子会社向け」と「日本国内向け」でどのように按分されていますか? 税務調査で突っ込まれやすいポイントを一緒に整理してみませんか。

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