中堅企業の国際課税リスク(移転価格)
グローバル・ミニマム課税の対象となる企業は、
「年間総収入(連結売上高)が7.5億ユーロ(約1,100億円)以上の多国籍企業グループ」です。それ以外の海外取引がある企業を中堅企業としてお話したいと思います。

1.移転価格では何が問題になるのか
最大の懸念は、グループ内取引を通じて「本来あるべき国から利益が流出している」と税務当局に判断され、多額の追徴課税を受けることです。
例えば、日本の親会社が海外子会社に製品を販売する際、価格を意図的に低く設定すれば、日本での利益は減り、現地での利益が増えます。これに対し日本の税務当局は「独立した企業間で行う価格(独立企業間価格)」よりも低いとみなし、日本で得られたはずの利益を再計算して課税を行います。
この際、現地国でも既に課税されているため、「同一の利益に対して二つの国が課税する」という国際的二重課税が発生します。中堅企業にとっては、巨額の追徴金に加え、二重課税を解消するための「相互協議(政府間交渉)」に要する膨大な時間とコストが経営を圧迫する点が極めて深刻な問題となります。
2. リスク管理をどうするか
リスク管理の要諦は、後付けの言い訳ではなく事前の価格設定ルールとその証拠化にあります。
- 算定方法の選定と検証: 取引の内容(製造、販売、役務提供等)に応じ、TNMM法(取引単位営業利益法)などの最適な算定手法を選び、子会社の利益率が業界標準(ベンチマーク)の範囲内に収まっているかを定期的にモニタリングします。
- ローカルファイルの作成: 移転価格税制に基づき、取引の合理性を説明する文書(ローカルファイル)を事前に作成します。調査が始まってから作成するのではなく、取引開始時に「なぜこの価格なのか」をロジカルに説明できる準備が必要です。
- 契約と実態の一致: 親子間で締結した契約書の内容と、実際に行われている業務(機能・リスクの分担)が一致しているかを担保します。
移転価格対策は「一度作れば終わり」ではなく、市場環境の変化に合わせた定期的な見直しが不可欠です。
まずは、貴社の海外拠点の中で「極端に赤字が続いている拠点」や「逆に利益が出すぎている拠点」をリストアップすることから始めませんか?それこそが税務調査の最初のターゲットとなるからです。

