中堅企業の国際課税リスク(外国税額控除)

海外進出を果たした中堅企業にとって、売上の拡大と同じくらい重要なのが「キャッシュの流出をいかに防ぐか」という視点です。その中でも、多くの企業が陥りやすい落とし穴が「外国税額控除」の適用ミスによる二重課税です。
せっかく海外で利益を上げても、税務の知識不足から日本と現地の両方で課税され、利益が大きく削られてしまう事態は避けなければなりません。
1 問題 利益を蝕む「二重課税」の発生
海外の取引先からロイヤリティや利息、配当金を受け取る際、現地の税法に基づき、送金時にあらかじめ税金が差し引かれることがあります(源泉徴収)。
この税金は「現地に納めたもの」ですが、日本の親会社では、その差し引かれる前の金額(額面)を利益として計算し、日本の法人税が課されます。つまり、「同じ利益に対して、海外と日本で二度課税されている」状態になります。
これを解消するための制度が「外国税額控除」ですが、中堅企業の現場では以下のようなミスが散見されます。
- 適用漏れ: 海外で源泉徴収された事実に気づかず、日本でそのまま全額課税を受けてしまう。
- 限度額超過: 日本で控除できる金額には上限(控除限度額)があり、現地で払った税金が多すぎると、引ききれずに「切り捨て」られてしまう。
2 根拠 法人税法第69条と租税条約の重要性
この制度の法的根拠は、法人税法第69条に定められています。しかし、単に条文を知っているだけでは不十分です。実務において最も重要な根拠となるのが、日本とその国が結んでいる「租税条約」です。
租税条約では、通常よりも低い税率(制限税率)が設定されています。例えば、現地の国内法では20%の源泉徴収が必要でも、租税条約を届け出れば10%に軽減されるといったケースです。
もし、この届け出を怠って高い税率(20%)で納税してしまった場合、「条約を適用すれば払わなくて済んだはずの10%分は、外国税額控除の対象外」であるため、外国税額控除を税務署から否認されるリスクがあります。
3 解決策 二重課税を防ぐ「3つの鉄則」
リスクを回避し、キャッシュフローを最適化するためには、以下の対策が不可欠です。
① 控除限度額のシミュレーションと繰越控除の活用
外国税額控除には上限がありますが、もし上限を超えてしまっても諦める必要はありません。法人税法では、「3年間の繰越」が認められています。
- 繰越控除: 今期引ききれなかった税額を、翌期以降の限度額に余裕がある時に充当する。
- 繰越余裕額: 今期限度額に余裕があった場合、その枠を翌期以降に持ち越す。 このシミュレーションを毎期行うことで、数年スパンでの節税が可能になります。
② 租税条約の優遇税率を事前に確認
契約締結前に、相手国の税率と租税条約の内容を確認しましょう。現地法人を通じて「租税条約に関する届出書」を事前に提出し、源泉徴収を最小限に抑えることが第一歩です。
③ 適切な「源泉徴収証明書」の確実な回収
控除を受けるためには、現地の税務当局が発行する「納税証明書(源泉徴収証明書)」の原本が必要です。取引先任せにせず、入金タイミングに合わせて確実に回収するフローを構築してください。
まとめ
外国税額控除は、制度を知っているかどうかで最終的な手残り利益が数百万円、数千万円単位で変わる非常にインパクトの大きい項目です。
「海外で引かれた税金は経費にするしかない」と思い込んでいませんか? 正しい理解と適切な書類管理、そして3年間のスパンを見据えたシミュレーションを行うことで、二重課税という「目に見えない損失」を防ぐことができます。
貴社の海外取引において、どの国の源泉税が最も負担になっていますか? その国の租税条約に基づいた「適正税率」を一度お調べします。お気軽にご相談ください。

