中堅企業の国際課税リスク(CFC税制)
中堅企業が海外市場へ本格進出する際、思わぬ「増税」として立ちはだかるのが「タックスヘイブン対策税制(CFC税制)」です。

「節税のためにタックスヘイブン(租税回避地)を利用するつもりはない」という企業でも、進出先の税率が低いだけで、意図せずこの税制の網に掛かってしまうケースが多発しています。本記事では、このリスクの正体と対策を分かりやすく解説します。
1 問題:知らない間に発生する「日本での合算課税」
シンガポールやベトナム、あるいはアラブ首長国連邦(UAE)など、法人税率が日本より低い国に子会社を設立している場合、その子会社が「税逃れのために作られた」とみなされるリスクがあります。
具体的には、子会社の実効税率が20%未満(※特定のペーパーカンパニーなどは30%未満)である場合、子会社が現地で稼いだ利益を、日本の親会社の所得に合算して日本で課税されてしまいます。
なぜこれが問題なのか?
現地の低税率を活かして再投資するはずだった資金が、日本の高い法人税(約30%)によって削られてしまい、グループ全体の資金効率が著しく低下するためです。
2 根拠:租税特別措置法 第66条の6
この制度の法的根拠は、租税特別措置法 第66条の6に規定されています。 日本政府は「実体のない会社を低税率国に作って利益をプールすること」を厳しく制限しています。しかし、正当な事業目的で進出している企業まで課税されないよう、「適用除外(経済活動基準)」という救済策が設けられています。
3 解決策:経済的実体の証明と「4つの基準」
課税を回避するためには、その子会社が現地で「実態のあるビジネス」を行っていることを証明しなければなりません。以下の4つの基準すべてを毎期満たす必要があります。
- 事業基準: 子会社の主たる事業が、株式の保有や知的財産権の提供(受動的な所得を得ること)ではないこと。
- 実体基準: 現地に事業を行うために必要な事務所、店舗、工場などの固定施設を有していること。
- 管理支配基準: その子会社が、自らの意思決定で事業の管理・運営を行っていること(日本の親会社から指示待ちではなく、現地の役員・従業員が機能していること)。
- 所在地国基準(または非関連者基準): 主として現地の経済圏で事業を行っているか、あるいはグループ外の第三者と主に取引していること。
4 中堅企業が今すぐ取り組むべきチェックリスト
「子会社に一人しかいない」「事務所はレンタルオフィスの住所だけ」といった状況は、非常に危険です。以下の点を確認しましょう。
- 税負担割合のモニタリング: 各国の税制改正により、実効税率が20%を下回っていないか定期的に確認する。
- 取締役会の議事録: 現地で意思決定が行われている証拠(議事録や署名書類)を適切に保管する。
- 実務実態の棚卸し: 本社の人間が現地子会社の印鑑や通帳を日本で管理しているような「形だけの法人」になっていないか見直す。
まとめ
タックスヘイブン対策税制は、一度適用されると多額の追徴課税につながるだけでなく、海外展開の戦略そのものを揺るがしかねません。海外子会社を「単なる記帳上の存在」にせず、現地で自立した経済主体として確立させることが、最大のリスクヘッジとなります。
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